『火花』又吉直樹

hibana何かと話題の芥川賞作品、『火花』。

「笑い」というものを真摯に求道する姿勢の先にある、成し遂げられた結果がどのようなものであれ、道を求めるその道、道中自体が重要なのだ、と読むことができました。

以前舞台に立っていた折、長い稽古期間を経て、本番を終えると、それはもう何とも言えない虚無を感じたものです。芝居に興じていると、段々とそのサイクルから逃れることが怖くなってゆきます。つまり、舞台の本番を目指して作り上げていく行為それ自体が重要に思えてくるのです。もちろん舞台の本番を迎え、実際に舞台上で演技やら踊りを通して観客の視線を感じつつ、舞台の時間が成立することが大きな目的なのですが、その目的に向かいながら、「これが本当にやりたいことだろうか?」と、どこかで自身が破綻していくような心地を覚えました。笑い、あるいは劇、華やかな舞台というものは、華やかであるが故の陰の部分を多大に孕んでおり、だからこそ儚く美しく、この作品はその、道を追求する純粋さが故のどうしようもない愚かさが痛々しいほど人間臭く、共感できるのです。

で、本書はその儚さやら求道やら、笑いの化け物めいた感じとか、笑いに魅入られたがゆえ狂気をも自身に包含せねばならない悲哀やらを、地に足付いて描ききります。

読み終えてからもしばらくあとをひきます。強めの酒に似た読書です。

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