メリーゴーランド

merry-go-round

娘がメリーゴーランドに乗りたいと言うので乗せてあげた。回転がはじまり、木馬や馬車は速度を増し、自分の背丈以上の馬にまたがって不安そうな表情だった娘も、次第に楽しそうになり、手を振る余裕も出た。そういえば以前私自身、幼いころにメリーゴーランドに乗ってとても楽しかったような記憶がある。

本当に幼いころだったから覚えているといっても定かなことではないが、世界中がキラキラとしていて、とてつもない豊かさに包まれているような体験だった。夢があふれる原体験、なんて言葉では言い尽くせないような、世界中が希望に満ちあふれているような。

大人が感じる数百倍の感受性で子供は世界を捉えている。たとえばメリーゴーランドなどは、そんな夢があふれるきらめきの象徴だろう。一瞬の出来事ではあるけれど、自分のどこかにその体験が宿り、その先の人生の原動力になりうることだってある。

夜になって眠気に不機嫌そうな娘に「今日はなにか楽しいことはあった?」と聞いたら、「なにも楽しくなかった」と答えたが、「メリーゴーランドは楽しかったでしょ」と聞くと、「メリーゴーランドは楽しかったけどさ」と、思い出したような表情をした。

子供はすぐに忘れる。瞬間瞬間を生きている。けれどちゃんと記憶が蓄積されていて、すっかり親が忘れているようなことを覚えている。

もうすでに彼女は彼女の時間を生きている。くるくる回転した記憶も、きっとどこかにそっと仕舞われている。

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