神保町、書泉ブックマート閉店の瞬間

syosen2

仕事を終えての自転車での帰路の折、神保町に差し掛かったところで、いつもと違う日常に遭遇した。

ビルの前に人だかり。えっ、何だろうと思い、その向こうを見ると、たまたま、神保町のひとつのシンボル的書店「書泉ブックマート」の閉店のタイミングだったのだ。

書泉ブックマートと言えば、神保町を代表する書店のひとつである。アイドルやライトノベルなどのサブカル文化の聖地として、本の街の広小路に屹立していた。

丁度シャッターが閉まるタイミングだったらしく、集まった人たちからは自然と拍手が巻き起こりはじめた、まさにその瞬間だった。状況把握が追い付かず「えっなになに」とその場に思わず止まったが、妙にドラマチックに見えるような、周囲にいる方々が浮かべる表情の、ひとつの歴史が終わってしまった場に居る寂寥と感慨と亡羊、みたいなものが漂っていた。

閉じたシャッターに貼られた横断幕にはこう書かれていた。
「48年間ご愛顧いただきまして、誠にありがとうございました。」

知らなかった、そんな歴史をこの場所に刻んでいたのだ。

syosen1

その時に思ったのは、こんな風にして沢山の人たちに見送られる閉店とは、実に幸福である、ということだった。そんな場所が、果たしてどれだけあるだろう?

沢山の人たちに拍手で見送られるということは、名店であることの証である。その素晴らしさがあったからこそ、最後の時に足を運び、閉店の瞬間に立ち会って拍手を送る人がいたのである。そんな思いに溢れた人たちに見守られて閉店することの、実に幸福な幕引き。

と思うと、そんな幸福な場にたまたま遭遇できたことは幸運だったと言える。

もしかすると、あるいはおそらくは、これから先にも沢山の幕引きに立ち会うだろう。

思いが深ければ深いほど、その幕引きに立ち会う時の心地は如何なるものだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする